筋肉痛はエキセントリック収縮によってもたらされるという知識を今更得た。エキセントリック収縮とは伸ばしながら力を発揮する筋肉の使い方、要するに降ろすときの動き。筋トレ界隈ではわりと常識らしい。

なんで今更気付いたかというと、普段走ったついでになんとなくやっているスクワット系トレをなんとなく3セット(普段は1セット)やってみたら想像以上のオールアウト感と凄まじい筋肉痛に襲われたから。引くまでに4日はかかった気がする。普段よりセット多いとはいえ、もとからそんなに追い込んでいたわけでもなく、さらに自重のみでここまで筋肉痛になるのかと驚いた。それで筋肉痛について色々調べてみたらエキセントリック収縮なるものにたどり着いた。

そして実はこのエキセントリック収縮はランニングにとても重要なのではと思い至る。

ランニングのどこで重要になるかというと、着地の局面。伸ばしながら力を発揮するのは着地で体重を支えるときである。上り坂よりも下り坂を走ったほうが筋肉痛になりやすいというのもおそらく着地とエキセントリック収縮が関係深い証拠だろう。

つまりエキセントリック収縮は、速く走ることではなく長く走ることに貢献する。もしかしたら速く走ることにも貢献しているかもしれない。地面からの反発で走るという感覚に繋がっているのかもしれない。しかしやはり第一の役割は着地衝撃を受け止め長く走ることに貢献することと考えるほうが理に適っている。

下り坂とエキセントリック収縮の関連でさらにある用語が思い浮かぶ。岩本式ビルドアップ走でお馴染みの岩本先生が主張していた、峠の下り走で鍛えろという着地筋だ。

着地筋と呼ばれているのは大腿四頭筋を中心とした太腿前面にある筋肉群で、着地衝撃を受け止める役割を果たしているとのこと。確かにそんな気はするし、おそらく実際そうなのだろう。

そして着地筋は峠の下り走で効果的に鍛えられるらしい。ここまできたら最早類推していくまでもない。着地筋にあたるものが太腿前面あたりの筋肉であることは確かだが、着地筋としての力を発揮するのはコンセントリックではなく、エキセントリックな収縮だ。

着地筋は太腿前面の筋肉である。太腿前面の筋肉が収縮したら膝は伸びる。この情報でもって、着地の瞬間に膝を伸ばす力を加えて衝撃を相殺しているのかというメルヘンなことを考えていたがどうやらそうではなく、エキセントリック収縮によって衝撃を吸収するような働きをしていたらしい。今更ながら筋肉の働き方に納得がいった。

エリートランナーがいう地面からの反発で走るという感覚は、もしかしたらエキセントリック収縮の極みによる到達点なのかもしれない。鍛えぬかれたジャストタイミングのエキセントリック収縮で衝撃を吸収し、その勢いを殺さずにそのままコンセントリック収縮に繋げる。合っているのかは分からないがなんだか楽しくなってきた。そういうことにしておこう。

少なくともランニングにおいてエキセントリック収縮が重要な役割を担っていそうなことは間違いない。そしてさほど負荷がなかったにも関わらず尾を引くこの猛烈な筋肉が、エキセントリック収縮への不慣れさを意味していることも間違いない。つまりこれはウィークポイントな可能性が高い。あるいは逆にランニングでは全く不要な動きで、使われないから不慣れなだけという可能性もなくはない。いやさすがにそんなわけはないだろうと思うが確証はない。

どちらにせよ鍛えて損はない。なぜなら筋肉は裏切らない。しばらくはエキセントリック収縮による筋肉痛の探究者となろう。